傘おじさん
朝8時頃目覚めた。
昨晩お酒を体内にいれたせいで体は重く、起き上がると頭にソフトボールを急にぶつけられたかのように痛い。
起きると決まって部屋のカーテンを開け、網戸にして風を室内に入れる。
私が吐き出した二酸化炭素とアルコールの匂いが部屋に充満していたので、春の風がふんわり入ってきて、ゆっくり空気のお掃除をしてくれた。
春の陽気を感じながら、体を伸ばす。
そうしていると、誰かが靴の底をすり減らしながら私の家の前を通過している音が聞こえてきた。
首を伸ばして、下の道路に目をやると頭を朝日に反射させたおじさんがなぜか傘を持って小走りでいく。
???
が頭の中を占めていた。
だってめちゃくちゃに晴れてるし、雨予報なんてないし。
ある雨の時に傘をもってなかったおじさんに優しい誰かがあげたのかな、それでその人に返しに行くのかな、この春に包まれた今日に
なんて〜と考えて、顔を綻ばせている自分がいることに気づく。
その午後、古着屋で靴を買うことなんて滅多にないのだけれど運命的なものを感じ買った一足を洗った。 古着屋で買った物を洗濯にかけると他人の物だったのが急に自分の物になり、もう私がそれらを何年か使っているような錯覚をする。その瞬間がけっこう好きだ
そして洗い終わった靴を自部屋のバルコニーに干そうと靴紐を洗濯竿にくくりつけていた時、また聞き覚えのある音が聞こえてきた。あのおじさんが朝と全く同じ様子で、朝と同じ方向に走っていった。傘をもって。
なんか良い日になりそうだ〜