おにいさん

おにいさん(パパの弟)は亡くなったおじいちゃんと同じ難病を発症したみたいだった

おじいちゃんを火葬するタイミングで、ママがおにいさんの動作を不自然に感じて聞いたみたい

 

 

 

おじいちゃんの難病は小脳が萎縮していってしまうもので、うまく脳から体の動作へ司令が出せなくなって来るものだったと思う

主な症状は、体のふらつき、発する言葉のもつれ、ろれつが回らないといった感じ

 

 

 

今日はおじいちゃんのお葬式のために、一限の授業後に新幹線で静岡に向かった

 

 

 

おにいさんが駅までキャンピングカー(3代目らしい)で迎えに来てくれていて

助手席には、おにいさんの奥さんもいた

 

 

 

奥さんは、私とお兄ちゃんを見つけるなり「大きくなったわね〜」って言ったけれど

小学校の頃にあったきりで顔を記憶していなかったから、誰だろうって思ってしまった

でもとても腰が低くて、小さくて感じの良い人

 

 

 

この二人には子供がいない

奥さんはおにいさんと再婚で、自分の子供置いて、おにいさんのところに来てしまったらしい

それで当時は、おばあちゃんが結婚に大反対

自分の子供を捨ててきてしまうような人は、結婚相手として認めない、と

 

 

 

結局二人は、反対を押し切って結婚してしまったんだけど、

和解せずにおばあちゃんが亡くなった

 

 

っていう話はいまさっき聞いたもの。

だから、おばあちゃんのお葬式の時に、お寺の前までしか来なかったのか

 

 

話を戻します

 

 

 

お寺に着いて中に入ると、私の見たことのない人たちが5人くらい

みんな私たち兄弟のことを知っているみたいだったけど、誰一人わからなかった

 

 

 

とりあえず、その謎の親戚5人と私たち家族、そしておにいさん夫妻のみの小さなお葬式になるんだろうと思った

 

 

 

 

おじいちゃんを送るためのお寺は、高台にあって、市内を見渡せるところ

今日は天気が悪かったけれど、体を包んでくれるような湿気を多く含んだ温かい風が吹いていたな

 

 

 

その風がまっすぐに入るところに、おじいちゃんはいた

晴れていたら富士山も眺めることができたのかもしれないね

 

 

 

来る前はこじんまりとしたところでお葬式やるのかと思っていたけれど

広々とした場所で少人数。贅沢に場所を使っていて、なんだか清々しい気持ち

とても良い場所だったとおもう

 

 

 

お経がはじまると、ひとりひとりおじいちゃんへ焼香

 

 

 

おにいさんの番は、ちょうど私の後だったと思う

おにいさんは、どうも一人で椅子から立ち上がることができないみたいだった

膝が曲がらなくて、ピンとはってしまった状態

 

 

 

おにいさんは私のパパに似て、周りに真面目に振舞うことができなくて、

常におちゃらけているひとだから、

自分が立ち上がれないことを、周りの親戚に笑って見せていた

もちろん親戚のひとは、おじいちゃんと同じ病気らしいことを知らなかったから

その動きを不自然に感じたと思う

 

 

 

そして奥さんと私のパパに支えられて、焼香場所の前まで

 

 

 

抹香を香炉にくべる手が、どことなくロボットに動かされているようだった

おにいさんの思いとは裏腹に、誰かがその動作を阻止している感じ

 

 

 

 お葬式が終わって、立ち上がる時にもパパがおにいさんの体を支えてやると

おいやめろよ、大丈夫だよって手を振り払っていたな

まるで、まだ自分がおじいちゃんと同じ病気だとは認めたくないといった感じに

 

 

 

病気によって、おじいちゃんの体がどんどん違うひとのものになっていくのを

おにいさんは間近で感じていたから

これから自分がどういう道を歩むのかも正直わかっているのだと思う

 

 

 

会食の時には、親戚の人たちがおにいさんに

早く足治しなさいよ、若いんだから

といっていた

 

 

おにいさんはいつもどおり笑って

頑張ります

っていっていたかな

 

 

 

これから先、おにいさんと会う機会はないと思う。

 

 

 

おじいちゃんおばあちゃんがいた頃は、静岡に行けばおにいさんがいて

よく一緒に虫捕りとか釣りとかにいったし、

イカーがずっとキャンピングカーだから、何度かそれに乗って海に行った気もする

私の中には、元気で面白いおにいさんばかり

 

 

 

でももう 次に会うのは、おにいさんが亡くなった時くらいだろうか

 

 

 

奥さんと二人でこれからを生きていくおにいさん

もちろん二人は愛し合っているし、幸せなんだよなとも思う

 

 

 

でもなんだか先を思うと言葉にできず、悲しいような気持ちが私の中に充満しているよ

という話しでした